甲状腺疾患の治療法

主な甲状腺疾患の治療法を詳しくご紹介します。

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主な甲状腺疾患の治療法を
詳しくご紹介します

バセドウ病の治療法

治療法は大きく分けて3つありますが、いずれもバセドウ病の根本的原因を治療できるものではありません。治療をすることで症状は軽くなりますが、バセドウ病の原因物質が急激に増加して病気が再発、再燃する場合があります。
しばらくは治療を必要とせず、定期的な経過観察だけで良い状態(寛解)へと持っていくことが主たる治療法になります。

以下に3つの治療法をご紹介します。

1 内服治療

長期間きちんと抗甲状腺剤を内服していただける方で、副作用が出ない方が対象です。内服薬の効果と後述する副作用の有無について定期的に血液検査を行い、安全性を確認しながら、適切な量の内服を続けていただきます。
甲状腺腫の大きさと内服薬の効きめにより、甲状腺ホルモン剤を併用していただく場合もあります。

抗甲状腺薬による副作用

☆重大なもの

1白血球減少症

おもに雑菌から身を守る好中球が減少し、感染しやすくなる副作用です。発症頻度は1,000~10,000人に1人程度と報告されています。副作用の発生頻度は抗甲状腺剤を初めて内服していただく場合でも、内服を再開した場合でも、変わらないと言われています。
副作用は、上気道炎症状(咽頭痛や高熱など)で発症することが多く、また膀胱炎などの尿路感染の場合もあります。
このような症状が出現した場合には、抗甲状腺薬の内服を中止してすぐに来院して下さい。

2肝機能障害

重症な場合、黄疸などの症状が出ることがあります。定期的な血液検査で、これらの重大な副作用が生じましたら、電話連絡などにて内服中止と来院を指示させていただくことがあります。

☆軽度なもの

薬疹や筋肉痛などを生じる場合があります。

2 手術療法

術後再発に対し内服で治療中【1】

術後再発に対し内服で治療中【1】

術後再発に対し内服で治療中【2】

術後再発に対し内服で治療中【2】

早期にある程度の治療を完了したい方向けとなります。通常、全身麻酔下で行います。
手術療法だけで寛解を得られるのは大体60〜70%といわれ、術後にバセドウ病が再発してしまう方と、甲状腺機能低下症となる方が報告されています。

全身麻酔による合併症や術後出血、術後低カルシウム血症、反回神経損傷によるしわがれ声(声野のかすれ)等の危険があり、入院が必要となります。

また手術療法は甲状腺周囲に存在する神経や臓器への損傷を避けるために、通常1回しか行えません。当院では甲状腺の手術に習熟した信頼できる医師を紹介しております。

3 アイソトープ治療

形態

形態

動態

動態

放射線同位元素(ラジオアイソトープ)を内服していただく治療法です。
放射線被爆が起きるため、妊娠を希望される女性や、授乳中の方には原則禁忌とされています。
この治療法は永続性の甲状腺機能低下症を生じる可能性があります。ラジオアイソトープ治療は特殊治療となりますので、当院では行うことができません。関連医療機関へ紹介させていただいております。

いずれの治療法も残念ながらバセドウ病の病態の本質である自己免疫反応を改善する治療ではなく、寛解を目指す治療です。

橋本病の治療法

治療法は「甲状腺機能低下と甲状腺の腫れの程度」により以下のように変わります。

甲状腺機能が正常で、甲状腺に腫れがない場合

基本的に治療の必要はありません。しかし徐々に甲状腺機能が低下してくる可能性がありますので、定期的に検査(3〜6ヵ月に一度)を受けるようにしましょう。甲状腺腫の増大がない点、ホルモン不足が生じていない点を確認し経過観察させていただきます。

甲状腺に腫れがあり、頚部違和感などの症状がある場合

甲状腺ホルモン剤を内服していただき、症状の経過をみます。

甲状腺機能が低下している場合

皮膚乾燥やむくみ、甲状腺の腫れなどを発症している場合は症状の緩和が第一です。不足している甲状腺ホルモンを内服して補充していただきます。橋本病は根本的な原因治療の行えないやっかいな病気ですが、必要量のホルモンを内服していただくことで安全な状態となり、健康な方と同様に生活をすることが可能です。

結節性甲状腺腫の治療法

甲状腺腫瘍の症状と大きさにより治療法が異なります。

1 良性腫瘍

腫瘍が小さく周囲臓器に圧迫などを示さないものについては、基本的には治療を必要としませんので、3~6ヵ月に一度の経過観察をさせていただきます。
腫瘍が大きく周囲臓器に圧迫などがあり、頚部腫瘍としても目立つものには甲状腺ホルモン剤を内服していただく場合があります。腫瘍の増大を抑制する治療になります。良性腫瘍のうち、のう胞を形成するものに対しては、特殊治療として腫瘍内に少量のエチルアルコールを注入し腫瘍を縮小する治療(PEIT)が有効な場合があります。
これらの治療で効果が出ず、喉の違和感が強く残っていたり、周囲臓器への圧迫症状があって腫瘍が増大傾向にある方、また手術を望まれる方には、手術療法を適応します。

2 悪性腫瘍

甲状腺に生じる悪性腫瘍には、甲状腺がんと悪性リンパ腫があります。それぞれの治療方法は以下の通りです。

甲状腺がん

甲状腺がんは、分類によって悪性度と治療効果・予後がはっきりと異なる腫瘍です。
当院では原則的に甲状腺がんと診断した場合には、進行の遅い高分化型がんであっても、稀に腫瘍の性質が変化して悪性度が急激に高くなる場合(未分化がんへの変化)を考慮して、手術を推奨しています。甲状腺手術に経験豊富な専門病院をご紹介しています。
患者さまの健康状態や年齢によっては、経過をみながらがんと付き合っていくという選択肢もございます。患者さま一人一人に合わせた最良の治療法を提案いたしますのでご安心ください。

悪性リンパ腫

放射線による局所治療が著効することで知られています。甲状腺以外のリンパ節などに病変が広がった場合、化学療法が必要となることがあります。

3 機能性腫瘍

ホルモンを産生していても甲状腺機能亢進症状がなく、腫瘍が小さい場合には3ヵ月ごとに定期検査を受けていただき経過観察いたします。ホルモンの産生が多く、機能亢進症状を生じる場合にはPEIT治療を行います。腫瘍が大きい場合で手術を希望される方は、手術療法も選択可能です。

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